エッセー
ポクは生まれてはじめて山荘に泊まりました。駅に着いたのは夜でした。山の方に向かって坂道を登るうちにだんだん街灯の数が少なくなり、お父さんのベンライトの光をたよりに心ぼそく山荘へ向かったのでした
「むかしからこのあたりは炭焼きの人が木を切りにやってくる雑木林だったそうだよ」とお父さんは教えてくれました。むかしと同じようにヘビやムカテが顔を出すそうでそれにおっかないスズメバチもいるらしいのです。お父さんは、いつも危険な動物のことをはなします。ポクが近づいたり、さわったりしないよう教えてくれるのでした。はなしを聞きながらボクは、おっかないけれど、ほんもののへピやムカデを見つけてみたいと思いました。
翌朝、鳥の声で目をさましました。「コッチコイ」「コッチコイ」と鳴いているみたいですコジュケイという名前の鳥でした。
鳥たちは鳴きながら自分のなわばりをほかの鳥に知らせているんだそうです。
「人の耳にはコッチコイと聞こえるけどコジュケイはアッチイケと鳴いているわけさ」といってお父さんは笑いました。
ひんやりとして、とても気持ちのいい山の空気が流れています。
ドングリの木の間につるしたハンモックの中で、ボクは思いきり手足をのばしてみました。ユラユラゆられていると、小さい頃おんぶしてもらった時と同じように、からだ全体の力がスーッとぬけていくのでした。
木の幹を大きなアリがせかせかと登っています。時どき立ち止まっているアリもいますが、考えこんでいるみたいで、遊んでいるようにはみえないのが不思議です。枝の間に糸をはったクモは、よく見るとボクのまねをしてハンモックにゆられて遊んでいました。
喜田川 昌之