喜田川 昌之 わらべ絵館

サンデーコラム
2026年7月5日

エッセー
巣箱

 シジュウカラが虫をくわえて小枝から小枝へととびはねている。

 ミュージアムの玄関先のどんぐりの木(クヌギ)に手作りの巣箱をかけたのは2月のこと。針金で幹にむすびつけようと、小さい山の斜面に梯子を立てかけて作業を終えたところ、ぶざまにも巣箱がナナメになってしまった。箱は真四角なので、今も巣箱を見る時、無意識に首を傾けている。

 まあ、鳥にしてみれば出入り口の穴が真ん丸なので、タテもヨコもナナメもないだろうと思いそのままにしていた。

 4月の中頃、斜めになった箱のまわりをシジュウカラがチヨロチョロしている姿を見かけるようになった。そして五月のゴールデンウィークに合わせるように巣箱の丸い穴から出入りしはじめた。見ると口に虫をくわえている。そういえばこのところ夜、窓を開けるたびにアミ戸に近寄る小さな虫をみかける。

 親鳥は黒い頭に白い頬、あごから腹にかけて黒い線が走り、背は青っぽいグレー。涼しげな色をしている。「だいじょうぶだよ なにもしないから」と声をかけているせいか、警戒する様子もなくなり「スイッチ スイッチ」と鳴きながら尾をはね上げて、ひとりごとに応えてくれている。なにより箱の斜めを気にしないところがうれしい。ヒナの声はまだ聞こえてこないが、巣立ちの時まで巣箱がこわれないでほしいと願っている。

喜田川 昌之

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