喜田川 昌之 わらべ絵館

サンデーコラム
2026年2月8日

8.虹を追いかける子

 

 めずらしくコウジがおくれてきた。顔を赤らめ興奮気味だ。「保育園のかえりにネ 空に虹が出てたの、そんでネ、おかあさんといっしょに虹をおいかけていたの」虹はつかまえられずあきらめたらしい。ハーハー息をはずませて話すコウジの姿をはじめてみた。三兄妹の長男、ふだん弟のケンよりおちついていた。

 興奮がおさまったところでコウジは、さっそくホカホカの虹を描き、下に黄色い傘をつき出して虹を追っかけている自分の姿を描いた。

 あれはボクがこのアパートに引っ越してきたばかりの頃だった。道路に段ボールに入れた赤ちゃんを引きずってあやしている若いお父さんの姿を見かけた。あたりを気にするでもなく赤ん坊を抱きしめている姿もほほえましく思え、いまだにその親子の光景が目に焼きついている。夫婦できりもりする店で日頃、両親の働く姿をみながらコウジは育った。たっぷりと両親から愛情をもらって、とても素直な子に成長している。

 この小さな商店街は本屋、床屋、菓子屋、おでん屋、カメラ屋、文房具店、新聞販売店乾物屋などが軒を並べている。そして奥に入ったところにある、日の出市場には肉屋、魚屋、八百屋が並んでいた。毎年大人たちが菓子屋の前で「モチつき大会」を開いてくれる。教室のコウジや、ケンは、十二月に入るとこの行事を楽しみに待ちこがれているのだった。

 子どもたちのために心ある大人たちが年中行事を絶やすことなく引き継いでいくことだろう。

喜田川 昌之

一覧をみる