エッセー
鳥精神
半島暮らしをしたいと、首都圏や関西圏から移り住んだ人たちや 半島に生まれ育った人が顔をみせる。
「さくらで知られる河津には鳥精進、酒精進といって、12月1 8日から23日まで鳥や卵を食べず酒も飲まないという風習があっ て、うちの地区ではちゃんと守ってるんですよ」 当館を建てた時の 総責任者だったIさん(建築会社の取締役)。いまもって台風が通過 した翌日はもちろん、毎年、節目に顔を出し不具合はないかと気に かけてくれている。この日も自分が手がけた囲炉裏端で話しはじめ る。
「12月に家族の不幸があって、鳥精進の明けるのを待って23 日の午前0時にあわせてお通夜を済ませたんです。」いかにも律儀な Iさんらしい。地区の酒飲み連中も昔からの風習をしっかり守って いるという。
来宮神社の話が言い伝えられている。「むかし神社が火事になり かけた時、鳥の群れがあらわれ、川の水を口に含んで火を消し止めた」さらに「御祭神が野火に囲まれた時、鳥の群れが水をかけて神 さまを救った」とも言われている。
古くから神に奉納する鳥の舞や白鳥伝説など天(神)と人をむす ぶ、鳥信仰のひとつに数えられる。鳥信仰の話を聞いてホッとする のは今、希薄になっている人をつなぐ絆の大切さがこの風習の中に 息づいているからだろう。
今でこそ早咲きの「河津ざくら」は全国的に知られているが初め の頃は、伝えきいた各地からの要望に応えて惜しげもなく苗を配っ た結果、河津の地名が一躍有名になったという。チョットいい話。 絆を大事にする土地の人たちにも支えられて当館は満7歳の春を 迎えた。
喜田川 昌之