喜田川 昌之 わらべ絵館

サンデーコラム
2026年3月15日

13.色まぜ

思ってもみない色が現われる。夢中で見入っていると、「はやく席にもどって!」という先生の声で、われにかえったことを思い出す。その授業で描いた絵は、どんな絵だったかも思い出せないのに、洗いながら見た、まるで手品のように変化する色のパレードの感動はボクの記憶の中にある。

 ボクが図画の時間にえのぐを使いはじめた頃だった。授業が終わりに近づき、使い終えた用具を手に洗い場に行き、汚れた水を捨てパレットを蛇口の下に置いた時だった。チューブからしぼり出した赤、黄、青、白、使いきってないえのぐが並んでいる。水をかけるとパレットの中でとけ出した色たちがまざり合っている。

絵を通して子どもたちと接する時に、ボクは目の前の子どもの目線に置きかえてモノをみるようにしている。「この課題はタイクツである」「興味が湧いてこない」などとつぶやくこともあれば「これはたのしいぞ」と意欲が湧いてくることもある。

 子どもの描いた絵を前にして、その子がどんな気持ちで描いたのだろうか。と思いをはせる。大人と子どもの間を行ったり来たりするうちに、自分の中にある子どもの頃の光景を思いうかべることが日常化していった 

お絵かきのあと、パレットを洗う子どもたちを眺めていると、色の変化を黙ってみつめるケンタ。「きれいな色だよホラ」と友だちに呼びかけるヨウ。パレットを前にした子どもの姿は、今も昔もかわっていない。夢中になるということは、集中しているということであり、思わぬ発見は感動をよびさます。

 お絵かき教室は、たっぷりと時間をかけるパレット洗いが授業の主役だ。

喜田川 昌之

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