喜田川 昌之 わらべ絵館

サンデーコラム
2026年3月29日

15.トンカチ

 

 色の変化をたしかめる一覧表づくりに、興味を持ちつづけたケンやトモは半年以上かけてスケッチブック一冊分を仕上げた。すると色づかいに変化が出てきた。発見した色を思い通りに再現することができる能力。色に対する感受性を育てる有効な授業がパレット洗いの中にねむっていたのである。

 教室ではトンカチ、木片、クギを準備している。木片にクギを打ちこむ体験をする。トンカチの使い方は、説明しない。一度、打ちこむ様子を見せるだけで子どもは、おそるおそる片手の指でクギを立て固定し、打ちはじめる。トンカチは大人用の方が、重みがあって、打ちこみやすい。はじめは用心しながら軽くうちおろす。この段階でユビにトンカチを当ててしまう。打ちそこなっても、口に指を入れるぐらいで、痛くても泣いたりはしない。集中しているから、またたく間に上達する。

 ボクが小学生の頃、自転車に乗った最初の経験は「三角乗り」だった。大人の男子用は腰かけ(サドル)の根っこからハンドルの下に向けて棒が渡してある。その棒の下は三角形の空間がある。もしサドルに腰かけたとしても子どもの足ではとうていペダルに届かない。そこでだれが最初に考えついたのか、三角形の空間に片足を入れて、からだを斜めに倒しながらペダルをこぐのである。顔はハンドルの下からのぞくように前を見ながら、何度も倒れたり、倒れかけたりしているうちに、バランスのとり方をおぼえ、少しずつスピードを上げて走れるようになっていった。「誰に教わるわけでもなく」感覚を身につけることの大切さはトンカチの使い方にも共通している。失敗を糧にして経験をつみ、自信をつけていく。

喜田川 昌之

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