喜田川 昌之 わらべ絵館

サンデーコラム
2026年5月17日


エッセー
2.昭和の話の泉

 ”うさぎ追いし彼の山、こぶな釣りし彼の川”子どもの頃歌った「ふる里」は今もシニアの集まりやパーティーでよく歌われている。そんな時、ボクの心の中にもうひとつの歌詞がうかんでくる。子供の頃に歌っていた「うさぎおいし」(美味し)かの山、こぶな釣りしかのかわ(鹿の皮)・・・・。当時、飼っているニワトリは泊まり込みの来客があるとその夜、食卓にのぼったもの。ボクが飼っていたウサギも食べられてしまった。鹿の皮は叔父から贈られたニホンカモシカの毛皮が藤椅子の背にかかっていた光景が浮かぶ。

 いつだったかラジオから「昔、うさぎ美味し・・・」とうたっていたという話が流れてきた。戦後よく聴いていたNHKの「話の泉」という番組を再現しているのだった。作家、イラストレータ、落語家、役者たちによる現代版である。

 「毎日毎日ボクらは鉄板の・・・」が鉄観音に聴こえたという人。「仰げば尊しわが師の恩」が「仰げば尊し和菓子の恩」と歌っていた人。ボクらの世代は、たとえそう聞こえたとしても、子ども心に先生や友人との別れを思うと和菓子の恩とは歌えなかっただろうが、大人になった今、聴くと面白い話やなあとつい人に伝えたくなる。

 その番組では話題にならなかったが「ゆきやこんこん」と歌っていたのだが正しくは「ゆきやこんこ」だと知ったのは大人になってからだった。ついでだがみんなで歌う時は不思議に二番の歌詞を先に歌ってしまう。一番は「山も野原も綿帽子かぶり」なのに。「犬はよろこび庭かけまわり猫はこたつで丸くなる」やっぱり二番を歌いたくなる。犬はからだいっぱいにうれしがって雪をけちらし、走りまわるし、ネコは寒がりでまるくなって眠っている。子どもたちが見つめる日常の光景が詞になっている。

喜田川 昌之

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